副施設長の江頭です。
ここ数日川崎の介護施設での介護職員の連続殺人事件のニュースが取り上げられています。ほんと介護業界にいてこれほど情けないニュースはありません。まぁ今の段階で取り上げられているのは、興味本位・犯罪という恐ろしさなどを使って商業的に視聴率をあげようとする「ニュース」であり、本質的な議論や、原因究明とこれからの対策というのはまだ先だと思います。ただ介護業界にいて、介護の必要な高齢者の数とそれをお世話する家族や職員の数があまりにもバランスが悪く、介護離職や人材不足で悩んでいる社会的な現状というのもこの原因の一つにあるのかもしれません。特に入所施設というのは、365日24時間体制は当たり前であり、夜勤があり、当たり前のように日曜・祭日も職員は働いています。そしてほとんどの職員は誠実に自分達の仕事に向き合っています。例え認知症の方が100回以上同じ質問をされても、ちゃんと受け答えをしていますし、夜間一人で高齢者の方に急変が起こるかもしれない状況で不安と戦いながら夜勤をしている人がほとんどです。しかしそのような地道な業務はメディアに取り上げられる事は少なく、介護業界というのは、「下の世話はだれでもできる。」「求人が多いので最悪の場合介護施設に行けばいい。」などと偏見や誤解が多く、介護を一生の仕事として誠実に仕事をしているスペシャリストにとっては歯がゆい事この上ない状況です。
介護の仕事というのは誰もがつける仕事ではありません。多様な症状を呈する高齢者に対し、柔軟な対応が必要であり、介護技術一つにしても無理な体制で介護をすると自分の体を壊してしまうので、専門的な技術の習得も必要です。そして何より今まで社会に尽くしてきた先人・先輩を敬い、例え体が弱っても、少しぐらい物覚えが悪くなっても、その失った能力を補い、残りの人生を楽しく過ごしてもらうという大切な仕事です。
今回の報道により、介護職に対し、介護職員に対し、「本当にちゃんとやってるの?」という疑問を持つのは当然だと思います。でも逆にこれだけ誠実に高齢者に向き合っている仕事があるという事も同時にみて頂きたいと思います。
偏見を持つくらいなら、身内・親戚の方で入所している方の様子を見に行ってください。「どんな暮らしをしているんだろう?」、「どんな環境でどんな職員がいるんだろう?」と一人一人が興味を持ち、色んな意見を言い合う環境になれば、きっと今回のような事故は減っていくと思います。
とっても情けない事件でしたが、その中にきっと今の状況から抜け出せるヒントがあると思います。